顕微鏡的多発血管炎⑨

 

 

検査結果を聞くというのは、

それなりに緊張感のある行為で、この時も

 

(そんなに悪い結果ではないだろう)

 

と思いながらも、

それなりの緊張感を持ちつつ病院を訪れました。

  

この日は母と姉も心配してくれ、

一緒に病院に来てくれていました。

 

待ちくたびれてそろそろ眠気がさしてきたころ、

手に持っていた呼出機が震え、

いよいよ診察の番が回ってきました。

 

「失礼します」

 

ドアを開け目に飛び込んできた大門先生のお顔には、

どことなく緊迫感が漂っているように見えました。

 

私は先生と向い合わせの椅子へ、

母と姉は私の後ろにある椅子へ腰をかけました。

 

先生の机の上には大きなパソコンのモニターが

2台置かれているのですが、うちの病院は検査結果を

紙ではなくこのパソコンのモニターに表示して

説明してくれます。

 

何ともなしに視線を移した

この先生のパソコンのモニターの片隅には

こう表示されていました。

 

”膀胱癌の疑い”と。

 

一瞬で頭が真っ白になり、

だんだん血の気が引いていくのが分かりました。

 

そして瞬間、

この文字を母と姉の視線から隠さなければと思いました。

 

インフォームドコンセントされれば100%バレるのに、

この時の私は文字を隠す事しか考えられませんでした。

 

幸い二人とも私の背後にいてくれたので、

モニター画面が見えないように

一生懸命背筋を伸ばして座りました。

 

付き添ってもらって矛盾していますが、

父を癌で亡くした私は

母と姉にショックを与えたくなかったのです。

 

特に母が知ったら、絶対に貧血で倒れると思ったので、

一生懸命背筋を伸ばしました。

 

ですが血の気の引いた身体で無理した私は、

自分が貧血で倒れました。

 

母と姉のさらに後ろにあるベッドに横たわりながらも、

丸裸になったモニターのその文字が

二人の目に入らないようにひたすら祈りました。

 

とまぁ終始こんな状態だったので、

何をお話されたのかあまり覚えていないのですが、

MPO-ANCAという数値が出ていて、

C3・C4補体の数値が異常なので膠原病の疑いが強い事、

この場合考えられるのは

顕微鏡的多発血管炎やSLEである事、

とりあえず蛋白尿血尿ともしっかり出ているので、

一度腎生検をした方が良いでしょう、

この様な事を言われたと思います。

 

最後まで大門先生の口から”膀胱癌”

の言葉が発せられることはありませんでした。

 

この日が10月23日だったのですが、

10月いっぱいで寿退社する事が決まっていた私は、

11月の頭に入院の予約をお願いし、

診察室を後にしました。

 

診察室を出た後も、

母と姉に特別変わった様子がない事から、

二人の目に膀胱癌の文字は見えなかったのだと思い、

ひとまず安堵しました。

 

顕微鏡的多発血管炎もSLEも

この時の私にはピンときませんでしたが、

膀胱癌には心当たりがありました。

 

先日の初診日の時に経験した排尿異常です。

 

調べると膀胱癌の症状に似ていました。

 

 

 

 

これからどうしようと思いました。

 

一番最初に彼の親御さんに申し訳ないと思いました。

つい先日結婚のご挨拶に伺ったばかりで、

私のような者でも「良い方が見つかって本当によかった」

と喜んでくださっていたご両親のお顔が

脳裏に浮かびました。

 

そして、母の事を思いました。

 

父が亡くなった時父に、

これからはお姉ちゃんと私がお母さんを守るから

安心してゆっくり休んでね、

と伝えたのにその私が病床に伏したら。。。

胸がすごく痛くなりました。

 

でも私で良かったとも思いました。

 

姪っ子がいる姉ではなく、

病気になったのが私で本当に良かったと思いました。

 

 

その夜、結果報告のため会った彼氏さんには

全てをお話しました。

 

彼の腕の中で私はしこたま泣きました。

 

付き合って初めて彼の前で泣きました。

 

彼は何を言うでもなく、

ただひたすらずっと傍に寄り添っていてくれました。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

ここまで大騒ぎしておいてなんですが

先にネタばらしをしてしまうと、

膀胱癌は私の勘違いでした(^^;

 

この後も膀胱癌であるかどうかを、

聞くに聞けずにいた私は結局、

今年の初め顕微鏡的多発血管炎と診断された時、

先生に真相を確かめてみました。

 

腎臓病の尿か血液の何かの項目を検査する時に、

膀胱癌の病名をつけないと調べてもらえない項目がある、

みたいな事を仰っていました。

 

「もし本当に何かあったら困るので、これからは気になる事は早めにきちんと聞いてくださいね」

 

と愛のお叱りをうけました(^^;

 

先生ごめんなさい(^^;

 

 

しかしこの勘違い膀胱事件やこの病気のおかげで

『寄り添う』という事の大切さを学ばせてもらいました。

 

不安という一言では言い表せないほどの気持ちを抱えた時、

その気持ちに寄り添ってくれる事が

どんなにありがたいものであるか。

 

 父のお見舞い、もっと行ってあげればよかった(>_<)

と反省しました。

 

もっともっと傍にいて寄り添ってあげればよかった、、、

後悔しても仕方ないですけど。。。

 

この経験、絶対今後に活かしたいと思います!!!

 

このブログをご覧の方の中で、

もし大切な人が闘病中の方がいらっしゃいましたら、

私は『寄り添う事』お薦めします。

 

くれぐれも貴方様ご自身も

ご無理され過ぎませんように<(_ _)>

 

皆、一日も早く元気になれますように☆☆☆